HTMLの知識がなくても、テンプレートを選び、要素を並べ替えるだけで配信用のメールが作れる——アララ株式会社のメール配信サービス「アララ メッセージ」の「HTML簡単モード」は、多くのお客様の日々の配信で、いまも使われ続けている機能です。

主力機能であり、日々使われている。だからこそ、手を入れるのが難しい。長く運用されてきたシステムほど、改善の要望に応えたくても動けない、という状態に陥りがちです。

BASHAKA株式会社では、サービスを止めずに作り直す取り組みをご一緒しています。多くの人に使われ続けるサービスは、なぜ選ばれ続けるのか。作り直すとき、何を守り、何を変えるのか。そして、動き続けているシステムの刷新を任せる相手に、何を求めるのか。アララ株式会社 代表取締役の門倉氏と、執行役員の田中氏に伺いました。

「これからマーケティングを始める会社」の、最初の一歩に選ばれている

HTML簡単モードのテンプレート

BASHAKA二田:メール配信の手段が増えるなかで、「誰でもHTMLメールが作れる」HTML簡単モードは、いま、どんなお客様に、どんな理由で選ばれているのでしょうか。

アララ門倉氏:共通しているのは、手間をかけずに、シンプルに作りたいという思いです。いま僕らが大切にしているお客様は、これからマーケティングに力を入れていきたい、という方たちなんです。業界というよりは、社歴の長い会社で、経営層から「DXを進めよう」という号令がかかって、まずはメールからやってみようか、と入ってこられる。「いままではどうされていたんですか」と伺うと、メールはBCCで送っていました、その手前ではFAXやDMです、という方も少なくありません。

だから僕らは、ウェブでの発信も含めて、これから始める方、初心者の方に優しくあることを大事にしています。製品としても、メールというところをシンプルに追求して、機能はあえて削ぎ落としている。それでも、こなれた価格で、やりたいことはできる。「一旦これで始めてみませんか」というご提案で選んでいただくことが多いですね。デジタルマーケティングの、入門的な存在だと思っています。

BASHAKA二田:HTML簡単モードは、アララ メッセージ全体のなかで、どんな位置づけの機能なのでしょうか。

アララ門倉氏:いま、一番選ばれている理由が、この機能です。「アララ メッセージといえば、簡単に作れるもの」という認識を作ってくれている。だから僕は、これを本当に世に広げたいと思っているんです。数ある機能のひとつではなく、それ自体が価値の中心だと捉えています。

制限があるから、誰でも「綺麗なメール」までたどり着ける

BASHAKA二田:お客様がHTML簡単モードを使い始める、最初のきっかけはどこにあるのでしょうか。

アララ田中氏:テンプレートだと思います。テンプレート機能がなぜあるかというと、初めて触ったお客様が、何も分からなくてもテンプレートを当てて、試しに送ってみて、「こんなに綺麗なメールが送れるんだ」と実感するまでの距離を、短くするためなんです。だからテンプレートの充実には力を入れてきました。あれがあるから、「簡単にできる」ことが最初の数分で伝わる。

それともうひとつ。メールは、受信する側の環境によって表示が崩れることがあります。自分でゼロから作ると、送った先のメールソフト次第でレイアウトが崩れたり、画像が表示されなかったりする。テンプレートは、主要なメールソフトで表示が崩れないことを確認したうえで提供しているので、安心して使っていただけます。

BASHAKA二田:機能を足すことより、削る判断のほうが難しいように思います。設計するうえで、何を軸にされてきましたか。

アララ田中氏:シンプルさです。HTML簡単モードは、あえて表現の自由度を絞っています。自由にすればするほど、メールは壊れやすくなる。逆に、制限を守っていただくことで、誰が作っても一定の綺麗さが担保できるんです。プロの方には物足りないかもしれませんが、プロなら最後は自分で直せますから。

狙っているのは、普段みなさんが受け取っているようなデザインのメールが、選ぶ・並べる操作だけで作れる状態です。社内では「パワポより簡単に」と言っていました。振り返ると、10年間戦える製品になったのは、10年先を見据えた戦略があったからでは全然なくて、「うちのお客様が迷わず使えるレベルにする」と、シンプルに考えていたからだと思います。

BASHAKA二田:初心者の目線は、作り手ほど忘れやすいものだと思います。田中さんはどう保っているのでしょうか。

アララ田中氏:頭の中に、ITが得意ではないテストユーザーを、ずっと住まわせているんです。チームから挙がってくる案に対して、自分はいくらでも「分からない人」になれる。頭の中のその人が「分からない」と言ったら、直します。初心者の気持ちを忘れない、ということですね。

もともと私はゲームや携帯電話向けのコンテンツを作っていて、狭い画面で伝えるために、誰にでも分かるもの以外は排除する、引き算の大切さを学びました。やりたいことに対して選択肢が多いと、人は迷う。だから迷わせない。HTML簡単モードは、スマートフォンの作法で作った道具なんです。その作法で作ったことが、長く持ちこたえた理由じゃないかと思います。

一番選ばれている理由だからこそ、作り直す

BASHAKA二田:長く使われてきた機能を、このタイミングで作り直すと決めた理由を教えてください。

アララ門倉氏:「お客様はなぜ僕らを選んでくれているのか」を突き詰めると、やっぱり「HTML簡単モードが使いやすいから」と言っていただくことが一番多いんです。だったら、そこにこそ投資して、もっと強くしていくべきだと。一番の強みであるにもかかわらず、機能の中身はリリース当時から大きくは変わっていなかった。それが根っこにあります。

アララ田中氏:現場の感覚で言うと、お客様の声は日々届いていたんです。「ここが使いづらい」という声が、お客様と接するメンバーから回ってくる。ただ、長く動いてきたシステムは、どうしても手を入れる難易度が上がっていきます。応えたくても、すぐには動けない状態が続いていた。今回、腰を据えて相談しながら進められる体制になったことで、「どこまでできるか」を前提に、要望に優先順位をつけて向き合えるようになりました。

BASHAKA二田:私たちがお手伝いしているのは、まさにその「応えたくても動けない」状態を解くところからです。日々の配信を止めないことを前提に、土台となる技術の世代交代を進めながら、使い慣れた操作感は変えない。この二つを同時に成立させることを、私たちは「継承開発」と呼んでいます。

ユーザーは変化に敏感。だから、気を使い合える相手と進める

BASHAKA二田:作り直すにあたって、使い慣れたお客様の操作感をどこまで守るか。動き続けているシステムに手を入れるうえで、大事にされていることを教えてください。

アララ門倉氏:ユーザーって、すごく変化に敏感なんですよ。ちょっとした変化でも「変わりましたよね」と気づく方が多い。長く使ってくださっている方ほど、ログインして、ファイルを上げて、と体が勝手に動くくらい操作が自動化されているので、いつもの場所にいつものものがないと、戸惑ってしまうんです。

だから、些細な変化までケアしてもらえるのは、本当にありがたい。「この辺は同じでしょう」という短絡的な発想にならずに、少し手を入れるだけの箇所でも「ここ、見た目が変わりますが大丈夫ですか」と先に教えてくれる。そうやってお互いに気を使い合える相手は、信頼できます。

BASHAKA二田:変化を入れるか、入れないか。判断の軸はどこに置いていますか。

アララ門倉氏:自分の思想が100点だとは思っていないんです。だから、その変化に点数をつけてくれるのは誰か、と考えます。一番使い込んでくださっている方たちの目線で見たときに、この機能を、このUIをこう変えたら、その方たちが離れてしまわないか。そこを軸に判断しています。

BASHAKA二田:田中さんは、外部のチームとものづくりを進めるうえで、相手に何を求めますか。

アララ田中氏:提案です。結局、選択権はこちらにあるんだから、大胆に言ってもらえばいい。自分にない視点の言葉をもらえるのは、私としてはラッキーなんです。自分の範疇で考えられることは、自分の範疇の中でしかない。その外側を言ってもらえるのは、当然ほしい。

実際、日々の作業の痒いところに手が届くような改善は、言ってもらわないと分からないものでした。すぐには採用しない提案でも、「それは素晴らしいね、いずれ生きるね」と自分の中にストックしているものもあります。言われないと分からないから、まずぶつけてみることが大事。ただ、いまやるべきことと、いまじゃないことは明確にあるので、何でも言えばいいわけでもない。ある程度、狙って提案してきてほしいですね。聞いたうえで「これは入れよう」となるものは、ちゃんとあります。

「止めずに作り直す」を、どう進めているか

ここからは、本件でのBASHAKAの進め方をご紹介します。動き続けているシステムをお預かりするうえで、徹底していることが3つあります。

BASHAKAが動き続けているシステムをお預かりするうえで徹底している3つのこと。01 変化は起きる前に共有する(門倉氏「ユーザーは、変化に敏感」に対して、見え方が変わる可能性があれば実装前にアララ様へ共有する)。02 毎週の定例にエンジニアが提案を持ち込む(田中氏「狙って提案してきてほしい」に対して、進捗報告だけで終わらせず、いまやるべきことを見極めて毎週提案を重ねる)。03 提案の種は使う側に回って集める(田中氏「言われないと分からない」に対して、メールコンテンツ制作もご一緒し、制作メンバーの気づきがその日のうちに開発メンバーへ届く)
お客様の言葉に、BASHAKAの進め方で応える。止めずに作り直す開発で徹底している3つのこと

1. 変化は、起きる前に共有する

止めずに作り直す開発では、土台の作り替えそのものよりも、「ユーザーが気づく変化」をどう扱うかが難所になります。門倉氏の言うとおり、長く使っている方ほど、操作が体に染みついているからです。

そこで私たちは、内部の作り替えにとどまる箇所であっても、見え方がわずかに変わる可能性があれば、実装前に「ここ、見た目が変わりますが大丈夫ですか」と共有します。変えていいかどうかの判断を私たちの側で完結させず、決めるための材料をアララ様にお渡しする。この一手間が、動いているシステムをお預かりするうえでの前提だと考えています。

2. 毎週の定例に、エンジニアが提案を持ち込む

受託開発で私たちが最も価値を出せるのは、実装そのものよりも提案だと考えています。週次の定例で必ず顔を合わせられる関係なら、毎週提案を重ねていけば、そのうちのいくつかは必ず刺さる。だからBASHAKAでは、定例の場にエンジニアが同席し、進捗報告だけで終わらせないことを徹底しています。

田中氏がおっしゃった「ある程度、狙って提案してきてほしい」は、まさに私たちが引き取るべき宿題です。数を出すだけでは足りない。「いまやるべきこと」と「いまじゃないこと」を見極めたうえで出せるかどうかが、提案の質を決めます。

3. 提案の種は、自分たちが使う側に回って集める

狙いのある提案をするには、お客様の声を聞くところから始めるしかありません。本件では、私たちはHTML簡単モードを使ったメールコンテンツの制作もご一緒しています。制作を担当するメンバーが「この作業は毎回時間がかかる」と気づき、その声が同じ社内の開発メンバーに、その日のうちに届く。

ユーザーのペインを人づてに聞くのではなく、自分たちがユーザーとして体験する。この距離の近さが、机上ではない提案の出どころになっています。実装のスピードは社内のAI活用でできる限り引き上げ、そこで浮いた時間を、提案を考えることに使う。それが私たちの基本的な考え方です。

いま、起きている変化

刷新の取り組みは、現在も進行中です。そのなかでアララ様の側に起きた変化として、田中氏はこう話してくださいました。「使いづらい」というお客様の声が届いても、システムに手を入れる難易度の高さから、すぐには動けない状態が続いていた。それが、腰を据えて相談できる体制になったことで、「どこまでできるか」を前提に、要望に優先順位をつけて向き合えるようになった、と。

届いた声を、そこで止めてしまうのか。優先順位をつけて、手をつけられる列に並べられるのか。長く運用されてきたシステムにとって、この差は小さくありません。

そして門倉氏は、BASHAKAとの取り組みについて「満足している」としたうえで、こう評価してくださいました。

メールの会社に対して、メールじゃない話をしてくれる。いまメールを使っていないお客様に対してやったらどうなるか——そこまで考えてくれるのが、最大の提案だと思っています。開発の取り組みにとどまらないところまで伝えてもらえているのが、大きいですね。

——アララ株式会社 代表取締役 門倉氏

信頼を財産にしながら、お互いの緊張感はしっかり保つ。門倉氏の言う「気を使い合える」関係を守り続けることが、動き続けているシステムをお預かりする私たちの責任だと考えています。

同じ課題を抱える方へ

自社で長く運用してきたSaaSや業務システムのなかに、「作り直したい。でも、止められない」機能を抱えている——本記事は、そんな課題をお持ちの方に向けてお届けしました。

毎日使われているシステムの刷新には、作る力だけでは足りません。ユーザーが変化に敏感であることを理解し、些細な画面の変化まで先回りして共有できること。「変えてはいけないもの」を発注側と共有したうえで、外側の視点から狙いのある提案を重ねられること。そして、信頼関係に甘えず、緊張感を保って進められること。アララ株式会社のお二人が語ってくださった「任せる相手の条件」は、この3つに集約されると私たちは受け止めています。

BASHAKA株式会社は、本件のように、動き続けているシステムの刷新を、止めずに進める開発をお引き受けしています。お客様が毎日使うツールを提供している事業会社の、事業責任者・開発責任者の方。「止めずに作り直す」を一緒に進める相手をお探しでしたら、ぜひ一度ご相談ください。